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納品が終わり、少し寂しい気持ちがあるが、今の素直な気持ちとしては良い家具を考え作れた事に感謝している。
打ち合わせなどを含めた7ヵ月の間の事を思い出す。キッチンや下駄箱からソファやベッドまで、いろいろ真剣に相談して頂いた事は、僕にとって「やる気」のでる家具作りであった。家具を作って欲しいという事は、単に家具という形を考えるのではなく、過ごすべき時間の提案でもあると思っている。
おこがましいかもしれないが、こんな物が欲しいという思いを形にしていく過程は、「大切なものを大事にしていく」という事にこだわっていかないと、何だか中途半端な物になってしまう事があると思うのである。
僕が打ち合わせをさせてもらうお客さんは、本当に「何が大切か」を考えている人が多く、その思いにも「やる気」をもらっているような気がする。
その人達と話していると、胸の奥にある何かを感じる瞬間があり、なんだかわからないが、鳥肌がたってきて「そういう事を求めてくれているんだ」とハッとする。
「あー絶対ここだけは叶えてあげたい」と心底思う。僕がやっている事は、言ってみれば提案ではなく、確認なのかもしれない。
僕の持っている経験と素材を加工する術で家具という形にし、その人達の思いを「こういう事なんじゃないですか?」というような確認なのかもしれない。
もちろん、僕の経験での想像からくるものなので、僕らしさはあるかもしれないが、僕らしさを出そうとした僕プロダクトの提案なのではない。
だから、オーダーメイドは話を聞く事からしかはじまらない。
その人達から今も教わっている事は、物の奥底にあったり、背景にある部分の大切な何かである。
だから、僕は「木工職人」だと思うが、「家具デザイナー」ではないと思う。
大げさかもしれないが僕がこだわっている事がある。家具屋を営んでいるが、単に家具を売っているという事ではなく、それは木で「思い」を形にしているという事だ。
結果、家具になっているので、「家具職人」と自分の事は言っている。
微妙な違いかもしれないが、先にあるのは肩書きではなく、何とかしたいというムズムズしたこの胸から腕にかけての感覚なのだ。
あー明日からもがんばるぞ。 |
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